New Food Industry 2024年 66巻 2月号
A case of wild yeast starter from raisins, in which red koji mold Monascus ruber was identified along with Saccharomyces cerevisiae
Shinya Kato
*Corresponding author: Shinya Kato
Affiliated institution:
Radioisotope Experimental Facility, Advanced Science Research Promotion Center,Mie University [2-174 Edobashi, Tsu, Mie, 514-8507, Japan]
Abstract
Home baking using wild yeast starters is popular, but its microbial composition needs to be clarified. This study examined physicochemical properties and microbial composition during the incubation of wild yeast starter from raisins. Over 7 days, cell numbers increased logarithmically on the 2nd day, plateauing on the 3rd day, while pH dropped from 4.82 to 3.71, and sugar content (Brix%) declined from 15.97% to 9.13%. One occupying yeast strain and a mold strain were identified in the wild yeast starter from raisins: Saccharomyces cerevisiae based on DNA sequences from the 26S rRNA D2 region and a red koji mold Monascus ruber based on the sequence of the genes for the β-tubulin. This single yeast occupancy was unexpected because wild yeast starters are usually thought to have diverse microflora. Monascus ruber is known to produce aromatic compounds and is used in foods. However, caution is advised when using wild yeast starter to avoid potential mold contamination in home baking.
ハナビラタケ子実体(Sparassis crispa fruiting body)による 免疫賦活効果と美容効果(デトックス効果)に関する研究
Immunostimulatory effect and detox effect of sparassis crispa fruiting body.
具 然和 (GU Yeunhwa),山下 剛範(YAMASHITA Takenori),井上 登太 (INOUE Tota)
Authors: Yeunhwa Gu 1*, Takenori Yamashita 2 and Tota Inoue 3 *
Corresponding author: Yeunhwa Gu 1,
Affiliated institutions: 1 Chairperson International Affairs Department of Radiological Science, Graduate School of Health Science, Faculty of Health Science Junshin Gakuen University [1-1-1 Chikushigaoka, Minami-ku, Fukuoka 815-8510 Japan.] 2 Graduate School of Health Science, Suzuka University of Medical Science 3 Mie breathing swallowing rehabilitation clinic
Abstract
Immune enhancement and beauty effects (detox effect) of the fruiting bodies of sparassis crispa fruiting body, and investigated their physiological activities and mechanisms. Fatigue and fatigue are serious social problems in modern society. Oxidation in the body due to mental stress, hard desk work, lack of exercise, and changes in diet has become a major problem. Fatigue is considered to be one of the important biological alarms, similar to pain and fever, for which countermeasures have already been devised. There is a need to consider and establish the technology. In this study, we conducted experiments on immune activation using the fruiting bodies of sparassis crispa fruiting body alone and in combination, and investigated these mechanisms. Furthermore, as the population continues to age, there is a need to consider science and technology to deal with the pathologies caused by aging. Additionally, environmental factors are likely to cause toxin accumulation in the body, leading to disease and aging. In modern society, mental stress, lack of exercise, changes in diet, and internal oxidation of alcohol are major problems. Accumulation of toxins in the body due to various environmental factors leads to diseases such as lifestyle-related diseases and aging. In the future, as the population continues to age, there will be a need to study and establish science and technology to deal with diseases caused by aging. This time, we focused on the natural ingredient sparassis crispa fruiting body. Sparassis crispa fruiting body is expected to be a healthy ingredient that boosts immunity. It is also said to have a detox effect, and can be expected to have beautifying skin and creating a feminine body. Sparassis crispa fruiting body is said to have effects such as activating NK cells, reducing atopy, suppressing allergic rhinitis, promoting collagen production, suppressing the development of diabetes, and suppressing increases in blood pressure. The effects and benefits of sparassis crispa fruiting body include anti-cancer effects, diabetes improvement, and blood thinning effects. Research is also being conducted on its ability to enhance NK cell activity, reduce atopy, suppress allergic rhinitis, promote collagen production, and suppress increases in blood pressure. Based on the above, this natural substance is good for the body and is currently attracting attention. In this study, we investigated whether the fruiting body of maitake mushroom alone or in combination can have a detox effect. It is believed that glucans may also promote the proliferation of fibroblasts and improve skin elasticity. In this study, using a lotion containing maitake extract has cosmetic effects such as improving skin wrinkles. However, research on the beauty effects of mushrooms is still in its infancy, and more detailed research is needed.
要旨
本研究では,ハナビラタケ子実体(Sparassis crispa)に対した免疫増強,美容効果(デトックス効果)に関した研究を行い,これらの生理活性やそのメカニズムについて研究を行ったことにした。疲労および疲労感は,現代社会において深刻な社会問題である。精神的なストレス,ハードなデスクワーク,運動不足,食事の変化などによる体内酸化が大きな問題となっている。疲労は,既にその対処法が考案されている疼痛及び発熱と同様,重要な生体アラームの一つと考えられているが,これまで疲労メカニズムについての解明はほとんど進んでおらず,それに対処したための科学技術の検討・確立が求められている。本研究では,ハナビラタケ子実体の単独および併用を用いて免疫活性の実験を行い,これらのメカニズムについて検討したこととした。また,益々高齢化が進み,老化による病態に対処したための科学技術の検討が求められている。また,環境要因により,体内毒素蓄積が疾病と老化に繋がる可能性が高い。現代社会において精神的ストレス,運動不足,食事の変化,アルコールなど体内酸化が大きな問題である。さまざまな環境要因により体内毒素の蓄積が生活習慣病など疾病と老化に繋がる。今後,益々の高齢化が進み,老化による疾病に対処するための科学技術の検討確立が求められている。今回注目したのは自然成分のハナビラタケ子実体である。ハナビラタケは,免疫力を高める健康成分として期待されている。また,デトックス効果もあるとされ,美肌効果や女性らしい体を作る効果が期待できる。ハナビラタケには,NK細胞の活性化作用やアトピー低減作用,アレルギー性鼻炎抑制作用,コラーゲン産生促進作用,糖尿病発生抑制作用,血圧上昇抑制作用などの効果があるとされている。ハナビラタケの効果と効能は,抗がん効果,糖尿病改善,血液サラサラ効果などがある。NK細胞活性の増強作用,アトピー低減作用,アレルギー性鼻炎抑制作用,コラーゲン産生促進作用,血圧上昇抑制の研究もされている。 以上のことからこの自然物質は体に良く,現在注目されているため本研究でハナビラタケ子実体の単独および併用によりデトックス効果が得られるのかを検討し,シワ改善効果についてはマイタケに含まれるꞵ-グルカンが,繊維芽細胞の増殖を促進し,肌の弾力を改善も可能であると考えられる。本研究では,マイタケエキスを含む化粧水を使用することで,肌のシワが改善のような美容効果がある。しかし,キノコによる美容効果については,まだまだ研究が進んでいる段階であり,より詳しい研究が必要とされている。
アマランス
瀬口 正晴(SEGUCHI Masaharu),楠瀬 千春(KUSUNOSE Chiharu)
本論文「アマランス」は“Lost Crop of Africa” volume II Vegetables NATIONAL ACADEMY PRESS 2006のAmaranthを翻訳紹介するものである。
アマランス(アマランサス) 科学の世界では,野菜アマランス(原文読み)はほとんど注目しない。国際的な統計を見る限り,この作物は存在しない。世界の食用植物を紹介する本でも,特に野菜を扱った本でも,ほとんど無視されているか,ほんの少ししか触れられていない。当然のことながら,世界の食糧供給の改善に携わる研究者たちは,この作物にほとんど関心を示さない。実際,ほとんどの人は野菜のアマランスについて聞いたことがないかもしれない。しかし,もしこの葉の作物が目に見えないように思えるなら,それは単にその葉がありふれて見えるからである。少なくとも50の熱帯諸国が野菜アマランスを栽培しており,その量は決して少なくはない。例えば,アフリカやアジアの湿度の高い低地では,アマランスは間違いなく最も広く食べられている野菜である。生産期には,アマランスの葉で1日のタンパク質の25%をまかなうアフリカの社会もある。西アフリカの一部では,柔らかい若苗が根こそぎ収穫され,町の市場で年間数千トンも売られている。アフリカ大陸の他の地域でも,同様の程度でこの植物に依存している。例えば,アフリカ南部の自生食品に関する決定的なレビューには,その地位が明確に記されている:「アフリカ南部で食べられている野生の食用植物の中で,アマランスほどよく知られ,広く利用されているものはほとんどない」。 アマランスは貧しい人々の資源であり,その植物はしばしば"卑しいもの"とさげすまれ,あたかも貧困そのものがそうであるかのように,何としてでも避けるべきものであるかのように無視される。米国農務省の公報が指摘するように,これほど見下されている野菜はほとんどない。いくつかの言語では,"not worth an amaranth"(アマランスの価値はない)という卑下した表現がある。実際,この植物は豚にしか適さないとみなされることもある(「pigweed」は,アメリカで軽蔑されている種の通称である)。
シリーズ: 世界の健康食品のガイドライン・ガイダンスの紹介 第10回
―欧州食品安全機関 (EFSA). 皮膚機能に関する機能性評価―
Introduction to Guidelines or Guidance for Health Food Products in the World: European Food Safety Authority (EFSA) series —Functional Assessment of Skin Function—
鈴木 直子 (SUZUKI Naoko),野田 和彦 (NODA Kazuhiko),波多野 絵梨 (HATANO Eri),中村 駿一 (NAKAMURA Shunichi),髙橋 徳行 (TAKAHASHI Noriyuki),LIU XUN,柿沼 俊光 (KAKINUMA Toshihiro),馬場 亜沙美 (BABA Asami),山本 和雄 (YAMAMOTO Kazuo)
Authors: Naoko Suzuki *, Kazuhiko Noda, Eri Hatano, Shunichi Nakamura, Noriyuki Takahashi, Xun Liu, Toshihiro Kakinuma, Asami Baba, Kazuo Yamamoto
*Correspondence author: Naoko Suzuki
Affiliated institution:
ORTHOMEDICO Inc. [2F Sumitomo Fudosan Korakuen Bldg., 1-4-1 Koishikawa, Bunkyo-ku, Tokyo, 112-0002, Japan.]
前回(2023 Vol.65 No.12 掲載,「シリーズ 世界の健康食品のガイドライン・ガイダンスの紹介 ―欧州食品安全機関(EFSA). 食後・空腹時の血糖値低減に関する機能性評価―」)に引き続き,欧州食品安全機関(European Food Safety Authority: EFSA)の発行するガイダンス(以下,EFSAガイダンス)について隔月で紹介する。今回は,EFSAガイダンスのGuidance on the scientific requirements for health claims related to bone, joints, skin, and oral health 1)の「6.2. Claims on maintenance of skin function」に記載されている,皮膚機能に関する機能性評価についてまとめた。本ガイダンスでは皮膚の機能維持や機能低下の軽減に貢献する皮膚構造の変化,および皮膚機能の一部である皮膚バリア機能の維持は,有益な生理学的効果をもたらすと考えられている。皮膚構造の特定の変化が皮膚機能の変化に寄与しているか,またどの程度寄与しているかについては根拠が示されるべきである。また,ここで示すバリア機能には,透過性バリア(水分損失の抑制),抗酸化バリア(細胞や分子を酸化による損傷からの保護),光保護バリア(細胞や分子を紫外線 [UV] による損傷からの保護),および免疫バリア(病原体からの保護)が含まれる。 そこで,本稿では,本ガイダンス1)に記載される皮膚の透過性バリア機能,抗酸化バリア機能および光保護バリア機能のヘルスクレームの根拠となるヒト試験の特徴に焦点を当て紹介する。 なお,本ガイダンスでは,皮膚の正常な構造,水分,弾力性,または外観の維持に関する健康表示は,Regulation(EC)No 1924/2006 2)によって求められる特定の生理機能と必ずしも一致していないことに注意する必要がある。また,しわの減少は,皮膚の構造/水分/弾力性の維持または改善に関連している可能性があるが,Regulation(EC)No 1924/2006 2)によって求められる特定の生理機能と必ずしも一致していないことに注意する必要もあると述べられている。
セサミン
万 毅(WAN Yi)
New Food Industry編集部
本解説「セサミン」はKamal PatelによるExamineの記事「Sesamin」を翻訳紹介するものである。
要約
セサミンは,ゴマに含まれるリグナン化合物で,人間の食事に含まれるリグナンの2大栄養源の1つである(もう1つは亜麻)。セサミンは,抗酸化作用や抗炎症作用(健康効果をうたう場合),あるいはエストロゲン受容体調節作用や脂肪燃焼作用(アテルト患者や減量希望者を対象とする場合)をもたらす栄養補助食品として仕向けられる。 セサミンにはいくつかの機序があり,総合的に見ると,脂肪酸代謝調節物質としてまとめることができる。この酵素を阻害すると,エイコサペンタエン酸(EPA,2つの魚油脂肪酸のうちの1つ)とアラキドン酸の両方のレベルが低下し,このメカニズムは経口摂取後に関連すると思われる。もう1つの主なメカニズムは,ビタミンEの代謝における速度制限段階であるトコフェロール-ω-ヒドロキシル化として知られるプロセスを阻害することである。この酵素を阻害することにより,セサミンは体内のビタミンEを相対的に増加させるが,特にγサブセット(γ-トコフェロールおよびγ-トコトリエノール)のビタミンEを増加させ,このメカニズムも経口摂取後に活性化することが確認されている。 他にも有望と思われるメカニズム(パーキンソン病予防,骨量増加促進)がいくつかあるが,エストロゲン受容体の調節,肝臓からの脂肪燃焼,抗酸化反応要素(ARE)の活性化など,ほとんどのメカニズムはヒトでは確認されておらず,そのメカニズムが起こらないと疑う理由がある; これには,経口サプリメントでは濃度が高すぎて問題にならないか,脂肪燃焼の場合はラットだけのプロセスのようであることが含まれる。 結局のところ,セサミンは,γ-トコフェロールとγ-トコトリエノールの分解を防ぐことによって,γ-トコフェロールとγ-トコトリエノールの代謝を増強する可能性を持つという,かなり興味深い役割を果たしている。これらのビタミンEビタミンのレベルを上げることは,それ自体多くの治療効果があり,サプリメントとして購入するにはかなり高価であるため,セサミンは安価な回避策,あるいはビタミンEを「カット」するために使用される何かである可能性がある。
連 載 乳および乳製品の素晴らしさ 第4回
熱中症対策に最適の飲料としての牛乳とその秘めたる経済性
熱中症には牛乳摂取が極めて有効,牛乳により食費が1割も節約可能
齋藤 忠夫(SAITO Tadao)
2023年は全国各地において猛暑が続き,10月に入っても20℃以上の気温が各地で観測されました。昨年は「熱中症」が全国で発生し,地球温暖化もその原因の一つのようです。熱中症の予防には,牛乳の摂取が極めて有効であることはあまり知られていません。今回はその有効性を栄養学とミルク科学の視点から説明したいと思います。また併せて,牛乳を日々の食事に上手に取り入れることは,実は家庭の経済にとっても非常に有利であるという点や,牛乳を学校給食から外すと経済的に学校給食が成り立たないことが判明した事例などについても紹介したいと思います。
Essay
Exploring Frontiers in Dental Research:A Glimpse into Future Horizons
Benjamin Aranda-Herrera, Iztlli Misael Tiscareño-Lara, Rene Garcia-Contreras*
*Corresponding author: Rene Garcia-Contreras
Affiliated institutions:
Interdisciplinary Research Laboratory (LII), Nanostructures and Biomaterials area, National School of Higher Studies (ENES) Leon Unit, National Autonomous University of Mexico (UNAM) [Blv. UNAM 2011, El Saucillo y el Potrero, Los Tepetates, León, Gto, 37684, México.]
Research is recognized as a crucial activity that involves inquiring, searching, exploring, and applying new knowledge to scientific, humanistic, or technological questions. Therefore, it is a systematic way to collect, interpret, and evaluate information with the goal of understanding a reality, comprehending a process, or discovering an outcome 1). In higher education institutions, students often have their first encounter with scientific research. Here they can reflect on their intellectual questions, develop skills in research and critical reading, propose well-argued alternatives, and communicate their findings in written or verbal form using a methodology aligned with their study objectives. Universities thus offer an ideal environment for fostering student participation in various research projects, making research an essential component of higher education to promote critical analysis among university students (Figure 1) 2). However, despite its importance, research is often perceived as boring and stressful by many university students. This adds to challenges like independent learning, adapting to the pace of university teaching, balancing work with studies, and a lack of self-confidence, increasing their discouragement towards research. For these reasons, it is recommended that university students be disciplined, motivated, independent, and efficient in achieving their academic goals 3, 4).
世界のメディカルハーブ No.17
ターメリック
渡辺 肇子(WATANABE Hatsuko)
強い色彩を放つ黄金のスパイス
鮮やかな橙黄色の色素が特徴的なターメリックは,インド料理に欠かせないスパイスであるだけでなく,薬,染料,化粧品などその用途は多岐にわたります。同じショウガ科に属するショウガ(ジンジャー; Zingiber officinale)と同様に,ターメリックも原産地が特定できない植物なのですが,おそらく南アジアが原産と考えられています。ターメリックは紀元前2,000年ごろにインドで牧畜をしていたアーリア人によって発見され,栽培が始まったと言われています。太陽を崇拝していたアーリア人はターメリックの色を太陽の色,あるいは神の色と考え,神から与えられた神聖な植物として崇めました。その考えが仏教やヒンドゥー教にも引き継がれ,ヒンドゥー教の多くの儀式に不可欠なものとなっていきました。ヒンドゥー教の聖典の中では,清浄と浄化に結びつくものとして言及され,「黄金のスパイス」とも呼ばれる繁栄の象徴です。 中東や地中海地方には,アレクサンドロス大王が中央アジアを征服した後の紀元前330年頃にはすでに広がり,AD700年頃には中国大陸,800年には東アフリカ,1,200年には西アフリカまで広がっていたと推測されます。日本へはマレー半島を経由し,スマトラやジャワなど東南アジアの諸島や台湾,中国大陸などから伝播したとされています。15~16世紀頃に琉球へ伝えられ,江戸時代には琉球において盛んに栽培されるようになりました。